Special 植物が刻む時を閉じ込めたようなデザイン

古橋路子(m silver)さん アクセサリー

銀粘土を使ってアクセサリーを制作されている古橋さんの千葉市稲毛区のアトリエにお邪魔しました。

「アンティーク好き」がスタートライン

銀粘土との出会いを教えてください。

もともと建築系の仕事をしていたこともあり、インテリアに興味があり、古いものが好きで、手を動かすことも好きでリースを習ったりもしていました。好きなことをいろいろ調べているときに、銀粘土のアクセサリーに出会い、アンティークともよく合うその雰囲気にひかれ、教室に通いはじめました。三人の子育ての真っ最中でしたが、埼玉の教室まで、時には週に何回も通ったりして、1年ほど夢中で習いました。10年くらい前のことになります。自宅で制作や教室をスタート、レンタルスペースなど外でのレッスンも増え、昨年1月にアトリエをかまえました。

アトリエの什器は古いものをうまく組み合わせていて、古橋さんの世界観が伝わってきます

銀粘土の魅力

銀粘土の魅力はどんなところですか?

銀粘土はリサイクルの銀の粉末と水とバインダー(結合材)を混ぜたもので、造形した後、乾燥させ、800度で5分焼成すると99.9%純銀になる素材です。扱いやすく、初めてでも粘土をこねるように形にすることができます。加工により、アンティークのような時間を経た雰囲気も出せるところも気に入っています。
また、素材の硬さにバリエーションがあり、粘土状のもの、注射器のようなものに入ったシリンジタイプのもの、ペースト状のもの、などつくりたいものに合わせて選べるので、例えばこの実をモチーフに作るにはどのタイプを使ってどんなふうにつくるのがいいかなあと考えるのもたのしいです。

銀粘土を焼く電気炉

銀粘土を焼く電気炉。このほかに2台使っているそう

細かさは植物そのものからの物も

実際に制作する工程を教えていただけますか?

例えばこのピアスのモチーフの場合、フレッシュのミントの葉を使います。葉そのものをうつし取るので葉の形をよく見て選びます。葉の裏側にペースト状の銀粘土を適度な水で溶いたものを筆で塗っていきます。葉によっては銀粘土がのりにくかったり、弾かれてしまったりすることもありますが、根気よく、のせていきます。塗ったら乾かすという工程を繰り返し、5層くらい塗り重ねます。その後しっかり乾燥させたら、電気炉で焼成します。葉が焼け落ち、葉の裏の葉脈が作品の表に現れて葉脈をうつし取ったモチーフとなります。仕上げに磨きをかけたり表面を加工したりして、アクセサリーなどに仕立てていきます。
他にも、粘土状の銀粘土を手で練って形をつくったり、シリンジタイプの銀粘土で小さな粒を表現したり、植物の柄を描いたり、本当にさまざまな技法があります。

写真左側の小皿に溶いたものがペースト状の銀粘土。葉の裏側に銀粘土を塗り、ドライヤーで乾かしたところ。右側が出来上がったミントの葉をモチーフにした作品です。手前の粒は、銀粘土を手で形を作ったところ

写真左側の小皿に溶いたものがペースト状の銀粘土。葉の裏側に銀粘土を塗り、ドライヤーで乾かしたところ。右側が出来上がったミントの葉をモチーフにした作品です。手前の粒は、銀粘土を手で形を作ったところ

植物の見方が変わる

植物そのものをうつし取っているのですね! 植物へのまなざしが変わりますね。

はい、いつもいいモチーフになりそうなものはないかなと、花や葉、実などをたえず観察しながら歩いてしまいます。季節によっても少しずつ形や色が変わっていくので、その移り変わりも見ていてたのしいです。葉は使いにくいものやとても綺麗に出るものなど様々なのでつい葉の裏をじっくり見てしまいます。また、同じ植物でも葉の大きさが異なるので、これは葉が小さいうちならイヤーカフにぴったり、などと考えたりもします。お野菜などの小さな葉も可愛くできるものがあってたのしいです。またドライフラワーが好きでたくさん作っていた経験も今に役立っているかなと思います。

虫食いや枯れたような葉もそのままにうつしとった作品。これも美しい

虫食いや枯れたような葉もそのままにうつしとった作品。これも美しい

銀粘土の楽しさを伝える

こちらのアトリエでは教室も開催されているのですね。

昨年はじめにこのアトリエを構えてからは制作も教室もこちらでしています。アトリエ以外でもワークショップとして ギャラリーや花屋、NHK学園などで教室を開催させていただいています。教室に来てくださる方や、一緒にイベントに出店する仲間がいたことで続けてこられました。そして作品を通して出会った方々からの言葉にたくさんの幸せをもらって進んできたなと思います。最近は植物のモチーフに目を向けていただくことが多く、植物のお好きな方々とたくさん出会えることがうれしいです。

植物をモチーフにした作品たち。植物を観察して、どうやったら表現できるかなと考えるのがたのしみだそう植物をモチーフにした作品たち。植物を観察して、どうやったら表現できるかなと考えるのがたのしみだそう

植物をモチーフにした作品たち。植物を観察して、どうやったら表現できるかなと考えるのがたのしみだそう

届けたいという想いへ

これまでの制作活動を通じて変わってきたなと思うことはありますか?

スタートは自分でつくりたいという想いだったのですが、だんだんと、届けたいという想いに変わっていったように思います。自分でつくったものができあがったときの喜びをお届けするため、教室を続けたいという想いと、いいものを制作して作品自体をお届けしたいという想いが両方あります。選んでいただけることがうれしくて、もっと銀粘土で表現できることを増やして、いいもの届けたいなと思っています。

様々な道具を使いこなして、銀粘土の世界を広げています

様々な道具を使いこなして、銀粘土の世界を広げています

グループ展に向けてひとこと

銀粘土に出会う前、gallery林檎の木でのリースの作品展に参加したこともあり、シルバーの初めてのお教室展を林檎の木さんでさせていただきました。今回は自分の作品で参加できるgallery林檎の木andR での展示が楽しみです。 アナベルのピンブローチやセージのリングやイヤーカフなど、それぞれ植物をうつしとったアクセサリーなどもお持ちします。

グループ展にお持ちいただく予定の品々。

グループ展にお持ちいただく予定の品々。こちらのアナベルは一つ一つ植物そのものから形をうつしとっているので、すべて一点ものになります。いぶし銀タイプも素敵

(聞き手・文:濱口さえこ 取材日:2020年8月24日)

住所:〒263‐0043 千葉県千葉市稲毛区小仲台6-19-21-2F
ホームページ:http://msilver.jp
instagram:https://www.instagram.com/michi_msilver/
facebook:https://www.facebook.com/msilver.silverpetitpas/

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