Special 野に咲く花のように長く愛される器をつくる

石黒美佐緒さん(つちのわ) 陶磁器

たくさんの花を散りばめたようなモチーフの器を制作されている石黒さん。千葉県八千代市の工房を訪ねました。

土との出会い

陶芸を始めたきっかけは?

20代のころ生花やお茶を習っていて、関係性の深い陶器を作ってみたくなり、ちょっとやってみたらたのしくて、鎌倉にあった教室に通いはじめました。土は自由な気がしました。30代で仕事を辞めるときに、陶芸家になりたいと決意。教室を探し、実家近くの教室を選びました。結果的には実家に近かったことで、出産後も子どもを実家に預けて通うことができたのでよかったです。
自由だなと思って始めた陶芸ですが、やってみると制約は多いし、難しい部分もあります。でも、使っていきながら変化していくところ、あたたかみに魅力を感じています。

工房の入り口に植物が溢れます。モチーフに使った植物は植えることにしているそう

まず、窯を買うお金を貯めました

独立までの道のりは?

通っていた陶芸教室の先生は「早く独立しなさい」と勧める方でしたが、当時はアパート暮らしで、窯も置けないし、泥もいじれないし、という環境だったので、何とかしがみついて、7、8年通い続けました。その後、千葉に新居を建てるタイミングで窯の購入や土間を作って一部屋をアトリエとすることを決め、2005年に独立しました。同時に陶芸教室も始めました。生徒さん一人からのスタートでした。

お庭にある窯

小さな積み重ねから生まれるデザイン

実際にどのようにつくっているのか教えていただけますか?

石膏型から作っている作品が多いのですが、まず、型を作る前に、小さなお花をひとつひとつ作り、そのひとつひとつの表情を大切に、並べ方、重ね方を考えます。出来上がった型に粘土を押しあてて、乾燥させます。これをいったん素焼きし、色を塗り、透明の釉薬をかけ、焼き上げます。
色の表現は難しく、思い通りの色になるよう調合したりして、一枚一枚塗っています。例えば、ライラックをモチーフに作りたいなという思いを形にするためには、この紫色をどうやって出すか、テストを繰り返して、ようやくデザインが完成する、といった感じです。

型をとって乾燥させたお皿

素焼きしたものに色を塗ったところ

にわのわバッチの思い出

型といえば、にわのわバッチもたくさん作っていただきました。

毎年「そろそろ型できましたか?」と河合さんに連絡して、河合さんがつくった型を元に、分業したり、手分けしたりして制作にあたりました。釉薬は色のバリエーションを相談しながら、掛けましたね。毎回200個くらい作っていたかな。毎年集めてくださっている方もいらして、うれしいです。

過去のにわのわバッチ

長く使っていただける器を作り続けたい

これからどんな作品を作っていきたいですか?

これからも変わらずやっていきたいと思うことは、ひとつのシリーズを長く作り続けたいということです。一つ一つ買い足してもらったり、家族分揃えた器を一つ割ってしまったとしえてもまた買い足してもらったり、という風に長く使い続けていただけるものを作り続けたいなと思っています。変わらずに作り続けたいから石膏型の器を作っていることもありますね。

お花をモチーフにしたさまざまなシリーズが生まれています

にわのわグループ展にむけてひとこと

実際に手にとって見ていただける貴重な機会なので、ぜひ、一枚一枚違う表情を見比べて選んでいただけたらうれしいです。

花いっぱいの人気のシリーズもにわのわグループ展に並ぶそう

(聞き手・文:濱口さえこ 取材日:2021年5月29日)

E-mail:tsuchinowa.330@softbank.ne.jp
instagram:https://www.instagram.com/ishiguro330

by